新札・新硬貨発行、及びゆうちょ銀行の料金新設で
精算機や両替機のキャッシュレス化が加速する

2021年11月をめどに新500円硬貨の発行が決まり、2024年には1万円札、5千円札、千円札の新紙幣が発行される予定です。従来の新硬貨や新紙幣の発行時には、新しい硬貨や紙幣に対応するために精算機や両替機などの設備投資が必要となります。 またゆうちょ銀行では、2022年1月17日(月)より従来無料だった硬貨持ち込み等の一部商品・サービスにおいて、料金が新設されます。

キャッシュレス決済が急速に進む中での貨幣の刷新とゆうちょ銀行のサービスの料金を新設・改定となり、これに合わせてインターネットに接続したキャッシュレス対応の機能追加やシステム更新などの新たな需要の拡大が期待されています。

2021年11月に新500円硬貨、24年上半期に新札発行へ

新硬貨は当初、21年度の上半期(4月から9月)の発行が想定されていました。ところが新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、金融機関のATMや鉄道などの公共交通機関の券売機などで、新硬貨対応のための改修が遅れ、発行の延期を余儀なくされました。

準備が整ったことを受けて、新500円硬貨は2021年11月に発行されることが決まり、21年度中に2億枚の発行が見込まれています。市中には約50億枚の500円硬貨が流通しているといわれ、大半が新硬貨に置き換わるのはまだ先になりそうですが、精算機や両替機などの改修や機種変更を進める動きは加速しそうです。

一方、新紙幣の発行は、2024年の上半期(4月から9月)に予定されています。1万円札は「福沢諭吉」から「渋沢栄一」に、5千円札は「樋口一葉」から「津田梅子」に、千円札は「野口英世」から「北里柴三郎」にデザインが刷新されます。紙幣が一新されるのは2004年以来です。

偽造防止の技術を盛り込んだデザイン刷新

新硬貨や新紙幣の発行は、偽造抵抗力の強化などが大きな目的です。1982年に初めて登場した500円硬貨のデザインの変更は2000年以来2度目で、新500円硬貨は3代目となります。紙幣はおおむね、20年ごとに紙幣のデザインを改刷しています。

新500円硬貨は、これまで使われていたニッケル黄銅に加え、新たに白銅と銅も使い2色3層構造にしているほか、縁のギザギザが刻まれている部分の形状を一部変えるなどの偽造防止技術を施しています。

新紙幣にも偽造を防止するためのさまざまな最新技術が導入される予定です。高精細すき入れ模様は光に透かすと模様が浮かぶ「すかし」に、印刷でも再現が難しい極めて細かい模様が入る予定です。

1万円札、5千円札には、角度によって肖像の3D画像の向きが変わって見える最先端技術を使ったホログラムを採用、千円札にはパッチタイプのホログラムが新たに導入される予定です。この他、指の感触で券種の識別が可能になるユニバーサルデザインも導入されることになっています。

デジタル化やキャッシュレス機の需要も拡大へ

新札や新硬貨が発行される度に自動販売機や精算機、両替機などの改造が必要になっていました。今回の新札や新硬貨の発行は、2019年から政府が力を入れているキャッシュレス決済の推進のタイミングと重なっているので、思い切った設備投資に踏み切る選択肢もありそうです。

メーカー側の準備は着々と進められており、新500円硬貨を使用するための製品の改造などについては部材供給体制を整えており、注文があれば順次対応していく方針を掲げるケースが多いようです。ただ機種によっては改造に対応できない可能性もあります。その場合は、キャッシュレス対応機能も搭載した最新機種への刷新に投資を検討するユーザー企業も出てきそうです。

新札が登場する2024年には、キャッシュレス決済はさらに進んでいるので、少額決済の精算機などで1万円札や5千円札への対応のための改造需要はそう大きくない可能性もあります。しかし、高額決済の精算機や電子マネーへのチャージが必要な機種、高額紙幣の両替機などでは改造・改修が必要になりそうです。

ゆうちょ銀行、一部商品・サービスの料金新設・改定を公表

ゆうちょ銀行は2021年07月02日に、一部商品・サービスの料金新設・改定を公表しました。2022年1月17日(月)より料金の新設・改定を行う商品・サービスは、主に以下の通りです。

■払込みサービスを現金で利用する場合の料金加算の新設
各種払込みサービスを現金でお支払いの場合、払込みをされるお客さまにご負担いただく加算料金を新設

■硬貨取扱料金の新設
窓口でお預け入れ等の各種お手続きの際に、硬貨をお持ち込みの場合、枚数に応じた料金を新設

■金種指定料金の新設
窓口における払戻し等の際の硬貨や紙幣の種類・枚数の指定について、指定後の枚数に応じた料金を新設

守りの投資から攻めの投資へ

インターネットに接続していないコイン式の精算機や両替機などの端末は、集金するまで売上金額がわからず、機器の故障などのトラブルを発生した場合も把握することができません。料金の変更や商品を変更した場合も、端末ごとに設定する必要があるなど人手を要します。

IoT(モノのインターネット)の技術が進む中で、コイン式の精算機や両替機をネットに接続することで様々な機能を持たせることができます。端末の状況をリアルタイムに把握できたり、遠隔からの適切な保守サポートが可能となります。

例えば両替機の場合、硬貨が減ってきた場合の連絡を自動的に送信させるサービスや、両替機の硬貨詰まりや札詰まりなどのトラブル、両替機を無理にこじ開けようとする不審な行動に対し、アラートを送信するサービスもあります。自動販売機等の場合は、釣銭切れや景品切れによる販売機会のロスを防ぐ一方で、マーケティングに必要な情報を取得し、分析することも可能になります。

このようにネットに接続できる精算機や両替機への切り替えは、マンパワーの労力を節約するなどコスト削減に効果がある上、販売機会の創出にも活用できます。新札・新硬貨対応という「守りの投資」を、業務改善を実現するための「攻めの投資」へと踏み込む企業が増えることが見込まれています。



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