代表インタビュー

官公庁、大企業、中小企業の安全を守る、情報社会の「医師」でありたい 飛天ジャパン株式会社 代表取締役 李 戦海

セキュリティに対する社会の変化

今は多くの方がセキュリティ強化の必要性を認識している

「インターネットセキュリティ」は、年々私たちの生活の中に浸透してきていると思います。セキュリティというと、以前は「難しい」「よく分からない」「高価」「一般の人には無関係」といったイメージがありました。ですが、現在は多くの方がいろいろなWebサービスを利用しており、もはやインターネットなしでは生活できないような時代になってきています。

いろいろなWebサービスを利用している方は、おそらくIDとパスワードをたくさん持っているはずです。中には買い物で1回しか使用していないものもあると思いますが、逆に毎月必ず使うものもあるでしょう。私は、月1回以上使用するものだけで30個くらい持っています。ただ、30個のIDとパスワードはさすがに覚えられません。この「覚えられない」という使い勝手の悪さを解消するというのが、近年のインターネットセキュリティにおけるひとつの課題だと思います。

今は多くの方がセキュリティ強化の必要性を認識している

また、Web認証のために使用しているパスワードには情報漏洩というリスクがあります。近年だけでも、複数の大企業が情報漏洩トラブルによって窮地に立たされました。情報漏洩のトラブルによって商品購入者やサービス利用者が離れてしまうということは、それだけユーザーが情報漏洩に対してナーバスになっているということ、そしてセキュリティ強化の必要性を認識しているということです。こういった部分にも、社会環境の大きな変化を感じます。

飛天ジャパンの存在価値

「使えるセキュリティをお客様へ」というスローガン

「使えるセキュリティをお客様へ」というスローガン

飛天ジャパンは、こうした問題を解決するためにいろんなサービスを開発・販売しています。私たちは「使えるセキュリティをお客様へ」というスローガンを掲げているのですが、この「使える」には、「便利」「安価」「手間がない」「理解しやすい」といったことが含まれます。でないと「使えるセキュリティ」になりませんからね。いくらセキュリティが強固でも、使いにくければ価値がありません。

2004年から運用されていたパスポート電子申請システムを例に挙げたいと思います。このシステムは導入3年で申請がわずか133件しかなかったため、ほどなくして廃止となりました。導入にかかった費用は21億円と言われているので、1パスポートあたりのコストは約1580万円ということになります。電子申請するにはカードリーダー、専用ソフトウェア、ドライバーなどが必要で、ITの専門知識がない方にとっては非常に使いにくいシステムだったわけです。

導入実績とそれぞれのニーズ

「内部不正を防止したい」「悪意あるソフトに対抗したい」

私たち飛天ジャパンは、官公庁や金融系の大手企業とも数多く取引をしています。

官公庁からよくご相談をいただくのは、やはり情報漏洩対策についてです。情報漏洩には外部からの不正アクセス防止という観点もありますが、内部不正を防止したいというご要望も数多くあります。私たちは、こういったお話を聞いたらすぐ開発に着手しています。ゼロからの構築だと時間がかかるので、すでに基本機能が入っているソフトウェアをカスタムする形で、官公庁の用途に合わせた機能を搭載しています。官公庁の調達ガイドラインに準拠した製品を提供することで、安心して使ってもらえるようになりました。

金融系の大手企業では、インターネットバンキングのセキュリティに関するニーズが多いですね。繰り返しになりますが、パスワードには漏洩のリスクがあります。近年では端末上のWebブラウザを乗っ取り、アカウントを盗み見たり、情報を書き換えたりしてしまうMITB(Man in the Browser)という悪意あるソフトもあるので、それに対抗するために電子証明などの技術を活用した製品を開発しました。

「内部不正を防止したい」「悪意あるソフトに対抗したい」

飛天ジャパンの親会社である中国飛天では、200以上の銀行にワンタイムパスワードトークンを提供した実績があります。私たちはそのノウハウや技術を活かして、日本でも認証強化の提案をしています。日本でも大手銀行を中心にワンタイムパスワードトークンによる認証強化が普及しはじめていますが、その流れはさらに加速していくはずです。

中国は日本よりもセキュリティが進んでいる?

中国では国がインターネットセキュリティ強化を主導してきた

中国では国がインターネットセキュリティ強化を主導してきた

中国でも日本と同じように、急速にインターネットが普及しています。特にインターネットバンクを使った金融投資やECサイトを介した売買は盛んで、GDPの何十倍というお金が動いています。インターネットバンクの利用者は日本では6割程度と言われていますが、中国では7割以上。70代の高齢者でもサクサク振り込みや手続きができるんですよね。

しかし中国は日本よりもIT環境が悪く、ご存知の通り13億という数の人がいるので、情報漏洩や不正アクセスなどがもたらす問題のインパクトは日本の比ではありません。こうした状況から、中国では国がインターネットセキュリティ強化を主導してきました。個人としては、自己防衛のためのセキュリティ開発も日本より進んでいる印象です。

飛天ジャパンは中国飛天と密に連携し、中国で培った技術やノウハウに独自の価値を付加し、「日本の品質」「日本のニーズ」に合ったセキュリティ製品を提供しています。中国と日本では求められるものが違いますし、安心してもらったり満足してもらったりするポイントも異なります。そういった点を意識しながら、「使えるセキュリティをお客様へ」を実践しているわけです。

飛天ジャパンの存在意義とは

日本市場でソリューションを提供するプロバイダー

飛天ジャパンは日本における中国飛天の販売代理店ではなく、日本市場でソリューションを提供するプロバイダーという役割を担っています。そのため、ただ輸入販売をするだけではなく、ソフトの技術的な問題を丁寧に解決するカスタマーサポートや、ソフトの自社開発、日系企業様のニーズを的確にOEM/ODM型式で実現できるようなコンサルティングなどにも力を入れています。ただ輸入したものを販売するだけでは、いくら使えるセキュリティ製品でもメリットを発揮しきれないからです。こうした技術サポートも、飛天ジャパンの特徴と言えます。

また最近では、「らく認」のようなクラウドサービスを展開する流れも始めています。官公庁や大企業はセキュリティ意識が非常に高いですが、中小企業ではインターネットセキュリティに大きな投資ができないというところも多いでしょう。官公庁のために作ったソフトをカスタムしてクラウドサービス化すれば、そういった中小企業にも気軽に導入してもらえるようになると考えています。

日本市場でソリューションを提供するプロバイダー

「どうやって安全な情報社会を実現するか」。これは、飛天ジャパンのようなインターネットセキュリティに関わる企業にとっては永遠のテーマと言えます。なぜなら、悪さをする側とそれを守る側・追いかける側は常に「いたちごっこ」で、完璧に安全な情報社会はおそらく実現できないからです。

ですが、その中で私たちは、情報社会の「医師」でありたいと考えています。この世から病気はなくならない。だったら、より良い生活やより安全な社会を目指して微力でも貢献し続けたい。悪くなった状況を改善するのも、健康な状態を保つ方法を啓蒙するのも私たちの仕事です。これからも、お客様に使えるセキュリティを提供していくつもりです。