EV充電ビジネスに様々な企業が参入

持続可能な社会を実現するため、環境規制の強化が検討されています。自動車業界では、ガソリン車から電気自動車(EV)などのエコカーへの置き換えが進んでいます。日本でも自動車メーカーがEV事業の強化を宣言し、それに伴いインフラである充電設備の整備が進んでいます。脱炭素社会の実現へ向けて官民が連携を強める中で、EV市場は急拡大することが予想され、充電ビジネスにも様々な企業が参入しています。

普通充電と急速充電のメリットとデメリット

EV充電の方式には、一般家庭用の電源などを用い充電を行う普通充電と、高速道路のサービスエリアや国道の道の駅、ショッピングモールの駐車スペースなどに設置している急速充電器を用いた急速充電の2種類があります。

普通充電は、充電器の価格が数千円から数十万円で投資額が少なくて済むというメリットがありますが、フル充電まで約8時間という長い時間を擁してしまいます。充電中は自動車を走らせることができないので、ビジネス化するには創意工夫が必要です。

一方急速充電は30分間で約80%の充電が可能なので、充電ステーション内にカフェやコンビニなどを設置しておけば、ユーザーはガソリンスタンドとそう変わらない感覚で充電ステーションを利用することができます。しかし急速充電器の価格は1台数百万円するので、電気自動車(EV)の普及率が1%前後(2021年)では充電ステーションの利用者が少なく、その投資額の負担が重荷となり、ビジネスとしては成り立っていないのが現状です。

EV充電ステーションの主役になりそうな急速充電

EV充電ステーションを事業化するには、ユーザーが目的地に向かう道中や目的地などに充電器を設置する方法が考えられます。空きスペースと充電器を確保するだけで、ビジネスを始めることが可能です。普通充電と急速充電のどちらを使うのか、2種類のバランスをどうするのかなど、収益性を確保するための戦略を練ることが必要になります。

単純に考えると、急速充電を活用したほうが多くの台数の自動車の充電を行うことが可能になるので、収益力は高まります。その一方で、1台数百万円の急速充電器を導入すると、投資額に対する負担が収益の圧迫要因になります。

このため、既存のガソリンスタンドでは給油器の代わりに急速充電器を設置し、EVの普及に合わせて、充電器の割合を増やす戦略が考えられます。このほか、EV充電ステーションに新規参入する場合は、30分の充電時間中にもお金を落としてもらえるような利用者にとって魅力的なサービスを併設することで、充電器の稼働率向上の実現を目指す戦略を考えなければなりません。

普通充電器を使って買い物中にちょっと充電も

これに対し、宿泊施設や娯楽施設などの目的地で充電サービスを展開する場合は、普通充電器を活用してコストを下げることが可能です。普通充電は充電時間が掛かりますが、目的地での滞在時間が長ければ、駐車している間に充電することが可能になります。

インフラを整備するときのネックは投資額が膨らみ過ぎることです。高額な急速充電器を様々な場所に設置しようとすると、中小規模の事業者ではなかなか参入の障壁が低くならないのが実情です。

しかし、EV自動車の普及が進んでいる欧州の国では、簡易な充電スタンドを数多く設置し、そのネットワークを広げることによって、買い物などの用事を済ましている間に、こまめに充電するというEV充電設備の使い方もあるようです。

日本でも、高速道などの長距離を運転するには急速充電が必要になりますが、都市部などでEV自動車を使うときは、スーパーやコンビニなどで「ちょっと充電」するだけでも十分かもしれません。

日本では、ガソリンスタンドが2019年に3万カ所を切るなど減少の一途をたどっているのに対し、充電スペースの拠点数は約2万カ所、充電器の数では3万5000台を超えています。今後も充電ステーションを軸とした、新しいEV充電ビジネスを起こそうという動きが加速しそうです。

欧州ではEVのデータを活用し、新たなインフラビジネスを模索

エネルギー価格が高騰する中で、EVのデータを使って、エネルギーの効率的な使用を実現するエネルギーマネジメントが欧州などで検討されています。電池の状況をモニタリングできるデータをオープン化し、充電が必要なEV自動車に対し、アラートを発信することが技術的には可能だと言います。

一方で、再生可能エネルギーによる発電は、太陽光や風力など自然状態に大きく左右されます。発電量が増えたタイミングで、充電場所に近いEV自動車に対し、そのタイミングを知らせることができれば、電力の無駄を省くことが可能になります。

充電ステーションの事業化を目指す事業者の他にも、データのオープン化によって、エネルギー業界や他業界からの新規参入者が、そのデータをビジネスに活用することが可能です。再生可能エネルギーを無駄なく活用するために、例えばIoTなどを使って、充電器の位置情報と、EV自動車の位置情報や電池状態を把握し、最適なマッチングを導き出す仕組みが構築されれば、EV自動車の普及促進と脱炭素社会の実現へ向けた大きな一歩になりそうです。


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