無人ビジネス

店舗に従業員を配置せず、キャッシュレス決済やAIカメラなどのデジタル技術を利用して会計業務や本人確認などを代替する無人ビジネスが様々な分野に広まっています。最近では、コンビニエンスストアやアパレルショップなどの小売の業態でも、無人ビジネスの実証実験などにトライする店舗も登場しています。無人ビジネスを成功させるためには、そのメリットとデメリットを検証し、必要のないテクノロジーの導入及び過剰な投資を避けることが重要になります。


無人ビジネスの最大のメリットは、人を配置しないでオペレーションができることです。それによって経営者は人件費を抑えることができ、採用にかける労力も削減するだけでなく、人手不足の心配やヒューマンエラーによるトラブルからも解放されます。しかし、無人ビジネスを行うためには、様々なテクノロジーを導入して、これまでは人が行っていた仕事をさせることが必要になります。主なテクノロジーとしては、本人確認のためのセキュリティシステムや、料金を受け取るための決済システムなどが挙げられます。

本人確認を行い、入退場を記録するテクノロジー

無人ビジネスを行うにあたっては、消費者に提供するモノや場所、サービスの対価として金銭を受け取る仕組みを整備することが必要です。例えば、無人フィットネスジムのように、場所やマシンを使ってもらうことがメインのサービスである場合は、料金は会費としてクレジットカードなどによる月払い契約にするケースが一般的です。

クレジットカード払いや銀行引き落としの場合は、フィットネスジムに新たな決済システムを設置する必要はありません。その代わりに受付に人がいないジムに会員が入場できる許可証を渡します。入り口に本人確認のための装置を置き、カードの会員証や暗証番号によって鍵が開き、入場できる仕組みが必要です。

ただ、この場合、許可証となっているカードを第三者に手渡すことで、契約者以外が入場してジムを使用する「なりすまし」を許すことになってしまいます。こうした事態を防ぐために、無人のフィットネスジムでは、契約者の顔や指紋などの生体情報によって本人確認をするシステムを導入するケースが増えています。この生体認証システムを設置することによって、契約者本人がいつ入場し、何時間滞在し、いつ退場したかの記録も残ります。24時間利用可能なジムでは、この仕組みを利用しているケースが一般的です。

キャッシュレス決済システムの設置が必要な無人ビジネス

一方で商品やサービスの提供タイミングで、料金を受領するタイプの無人ビジネスでは、本来は店員がレジで会計業務を行う代わりに、機械で会計を済ますことができる自動決済システムの設置が効果的です。

コインランドリーなどが代表例です。もともとコインランドリーは100円玉を洗濯機・乾燥機に投入することで機械を動かし、自動で洗濯や乾燥などのサービスを提供しています。しかし従来からのこの方法では、100円玉に両替するための機械の設置や両替用の100円玉を補充する必要があります。

最近はQRコード決済や電子マネー、クレジットカードなどのキャッシュレス決済が可能な装置を設置して、小銭の管理や料金の集計をしなくても済むコインランドリーも登場しています。洗濯機や乾燥機の稼働状況をスマートフォンのアプリで確認できたり、洗濯や乾燥の終了後、利用者のスマートフォンに自動音声で知らせるサービスなども登場しています。

ICタグやAIカメラなどの仕組みが必要な無人ビジネス

コンビニエンスストアやアパレルショップなどの小売店では、無人ビジネスのトライアルが始まっています。機械がサービスを提供するコインランドリーや、場所を提供するフィットネスジムなどと比べると、小売店の無人ビジネスはハードルが高いと言わざるを得ません。買い物客がどの商品を手に取り、購入するのかという情報をICタグやAI搭載カメラなどで把握することが必要になるからです。

商品を購入するにあたっては、セルフレジで決済を済ませる方法と、予めクレジットカードなどの支払方法を登録しておき、店に入場する際に「本人確認」を済ませ、欲しい商品を手に取ってそのまま退場できる「ウォークスルー」方式があります。

しかし実際は、小売店を完全に無人ビジネスにする店はまだ少なく、トラブルがあった場合に対応する従業員を待機させたり、近隣の中核店からすぐにスタッフを派遣できる仕組みを整えているケースがほとんどです。もしくは、オフィスビル内に無人店舗を設置し、そこで働く従業員など、予め決まった買い物を対象に営業しているケースなどもあります。

このように、無人ビジネスは、人手に頼らなくても営業できるというメリットがありますが、人に代わって仕事をするための様々な機器を設置するための投資がかかります。さらに、商品の盗難防止対策や機械の不具合、来店客の予期せぬトラブルがあった場合の対策を整えておくことも求められています。



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