エッジAIの特徴や活用におけるメリットやデメリットについて解説

モノがインターネットを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報を交換する仕組みであるIoT(モノのインターネット)は、製造業や金融といった様々な産業や、交通システムなどの社会インフラを支える技術として活用され始めています。この時、エッジデバイス(端末)にAI(人工知能)を搭載し、端末側で推論や判断などを行えるようにする技術をエッジAIと呼びます。エッジAIの特徴や活用におけるメリットやデメリットについて解説します。

端末近くにAIを搭載し、人間の知的な思考を再現

AI(人工知能)は、人間が行う知的な思考の一部を、人工的に再現したものです。経験を重ねて学習し、新たなデータの入力に対し、順応することができるのが特徴です。

エッジAIは、このAIの機能を端末の近くに配置し、現場で学習・推論させる技術です。エッジとは「端」と言う意味で、エッジAIは、端末を通して行われた新たなデータの入力に対して、人間が行うような推論・判断を行い、データを出力します。端末の近くにサーバーを配置し、データ処理することを「エッジコンピューティング」と言いますが、エッジAIはエッジコンピューティングにAIを搭載したものです。

エッジAIに対応するデジタル技術の用語として、クラウドAIがあります。クラウドAIもAIの技術を活用しますが、この場合は端末から得られた大量のデータを、ネットワークを介して送信し、データセンターのサーバーなどで集約し、そこで解析や高速学習をさせる技術です。

通信コストを低減

エッジAIとクラウドAIを比べると、エッジAIには次のようなメリットがあり、利用シーンも強みを生かしたものになります。

エッジAIは、取得したデータを端末内で処理します。インターネットを介してデータをサーバーに送信する必要がないので、全てのデータをクラウドに送信するクラウドAIに比べて通信データ量が抑えられ、通信コストも抑えることが可能になります。

通信環境が悪い場所では、端末内で処理するエッジAIの強みが発揮できる分野です。例えば、スマート農機やドローンなどのエッジデバイスの活用が検討されている農業分野や、スマート建機などを活用する土木建設分野のIoTなどでは、データの処理を端末側に任せることで、僻地などの接続状況が悪い地域でもデータ分析が可能になります。

リアルタイム対応

エッジAIは、データ処理をエッジデバイス内で行うために、クラウドAIに比べて、現場での即時対応が可能になり、リアルタイム性が高まります。開発が進む自動運転技術などの分野では、判断と制御の間にタイムラグが発生すると、重大な事故やトラブルにつながりかねないので、クラウドAIだけに任せるのは不十分です。

また、工場などの製造現場では、IoTを活用して大量のデータを解析します。通信環境に左右されることなく、リアルタイム処理が求められる分野です。エッジAIによって、現場で大量のデータを処理することで、工程を遅らせることなく、通信障害などのリスクも回避できます。

高いセキュリティ性

個人情報保護が求められる高いセキュリティ性が必須の分野でも、エッジAIの活用が有効です。クラウドにアップロードせずに機密データを端末内で処理することで、不正アクセスのリスクを低減でき、高いセキュリティ性を確保します。

例えば金融サービスでは、顧客情報をエッジAIで処理し、データをエッジデバイス内にとどめることで、漏洩リスクを低減するケースが増えています。金融サービスは、顔認証や指紋認証など、生体認証の利用が増えており、こうした個人情報をクラウドデータベースに格納しないことで、データが盗まれるリスクを低くすることができます。

また、スポーツクラブなどの会員制サービスや学校や病院などの施設、企業のオフィスや工場などの入退室管理といった個人情報の漏洩防止が求められる分野では、顔認証機能を持った入退室管理端末を設置し、エッジAIを使って、セキュリティ強化に取り組むケースが増えています。

大規模データの処理には不向き

一方、エッジAIは処理能力やシステム構築に難があるとの指摘もあります。エッジAIで使用するCPUやGPUはクラウドAIに比べてスペックが低くなりがちで、大規模データの処理には不向きです。利用シーンによっては、端末の大きさや消費電力に限界があり、端末に搭載できる機能を制限せざるを得ない場合もあります。

また、エッジAIは、クラウド側で学習、エッジ側で推論を行うAIシステムです。高度で複雑な処理や、推論で使用したデータの教師データ化が難しいとされています。さらに、エッジAIは端末側にAIを搭載するため、システム設計や保守運用が複雑化しやすく、運用のハードルが高いというデメリットがあります。

こうしたデメリットに懸念があるような利用シーンでもゲートウェイを見直したり、効率的なシステム構築や運用方法の改善などを行うことで、安価でセキュリティ性が高く、使いやすいシステム構築が可能になる場合もあります。

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