事業者とユーザーの双方にとって導入メリットがあるeKYC

eKYCとは、electronic Know Your Customerの頭文字を取った言葉で、電子本人確認を意味します。銀行口座の開設やクレジットカードを発行する時などに、身元確認をオンラインで実施することで、従来は窓口や郵送によって行っていた手続きをスマートフォンやパソコンで済ますことが可能になります。eKYCは、事業者とユーザーの双方にとって、本人確認作業を省力化し、サービスの利用開始まで時間を短縮させることができるなどのメリットがあります。

eKYCは、スマートフォンやパソコンを使って自宅でできる本人確認

サービスを利用するユーザー側にとって、eKYCを活用するメリットは、スマートフォンやパソコンを使って手続きすることによって、面倒な手間を省くことができることです。郵送で本人確認を実施する場合は、本人確認書類のコピーを用意し、郵便ポストに投函することが求められます。店舗の窓口に足を運んで対面による本人確認を行う場合には、わざわざ足を運んだうえに、待ち時間が発生することもあります。

eKYCを活用すれば、手続きが自宅のスマホやパソコンからできるだけではなく、本人確認の手続きがスムーズに行われることで、求めていたサービスをすぐに利用することも可能になります。大抵、本人確認が必要なサービスを利用する場合、ユーザーはその手続きが完了するまではサービスを利用することできません。

ユーザーにとっての便利さは、サービスの競争力を高めることに直結します。同じサービスを提供する企業同士で、本人確認がeKYCに対応している企業とそうでない企業を比べると、サービスの内容や価格に大きな違いがなければ多くのユーザーは手続きの利便性が高い企業のサービスを選択するでしょう。

事業者の業務効率化を後押し、本人確認のスピード化実現

サービスを提供する事業者にとってのeKYCを導入するメリットは、本人確認に関わるオペレーションの効率化とコスト削減を実現できることです。eKYCを導入することによって、本人確認書類の郵送やその確認などの業務や作業を大幅に減らすことができます。自社で本人確認業務を行っているケースでは、デジタル技術の活用による業務改善が進み、省人化やペーパレス化を図ることが可能になり、郵送費用も含めたコスト削減に繋がります。

eKYCによって、本人確認に関するセキュリティ強化に寄与することも期待できます。生体認証やAI認証技術などのテクノロジーの発達によって、本人認証の精度は紙や人の目だけに頼るよりも高くなり、「なりすまし」のリスクを低減させることが可能です。事業者側の認証手続きがスムーズになることで、ユーザーが申し込み手続きを途中で諦めてしまう「離脱」の防止にも繋がります。同じサービスを提供している同業他社と比べ、eKYCがスムーズに行えるシステムを提供している企業の方が、顧客の獲得に有利に働くことも考えられます。

避けて通れないeKYC導入、事業者は前向きに導入する意識を

ここまでeKYCによるユーザー側と事業者側のメリットについて紹介しましたが、そもそも本人確認は、法規制に基づいて義務化されている場合や、事業者の判断で自主的に利用されている場合があり、いずれも避けて通ることが難しい手続きです。

例えば、「犯罪収益移転防止法」では、金融機関、ファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者、宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者などの事業者に対し、なりすましの疑いが生じる特定の取引については本人確認を義務付けています。その他にも、古物営業法や携帯電話不正利用防止法、出会い系サイト規制法などの法律でも、対象の事業者に対し、様々なシーンで本人確認を行うことが義務付けられています。

法的に義務付けられている訳ではなくても、自主的に本人確認を行っているケースも増えています。ソーシャル・ネットワークサービスの会員登録や、チケット購入における不正転売防止のための本人確認、行政のオンライン手続きの本人確認など、オンラインサービスが充実する中で、なりすましによる不正防止の観点からeKYCを行うケースが増えています。eKYCへの対応が、他の事業者との差別化に繋がる時代になり、後ろ向きではなく、積極的にeKYCの導入に向き合う企業が増えています。

eKYCに対応できないユーザーを取り残さない工夫も

一方でeKYCに対応できないユーザーが出てくると、顧客を失いかねないというリスクもはらんでいます。例えば、eKYCに対応している本人確認書類を持っていないユーザーにとっては希望するサービスを利用できなかったり、できたとしても手間と時間がかかってしまうという可能性も出てきます。

サービス提供事業者にとっては、新しいユーザーを獲得する機会を失ってしまう懸念もありそうです。eKYCに対応したアプリのインストール作業や、本人確認のための写真撮影に手間取るユーザーも想定され、サービスを利用する前の段階で「離脱」を招く可能性もあるからです。また、証明書や本人の写真の撮影に不備があり、本人確認ができずに手続きをやり直してもらう場合も考えられます。

eKYCが普及する背景には、取引のオンライン化に対応し、本人確認手続きのオンライン化と厳格化も同時進行していることが挙げられます。デジタル技術が苦手なユーザーを取り残さないために、eKYCの操作性の簡素化や精度の向上などが求められそうです。



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