手のひら認証とは?

入退室にICカードや鍵を使っていると、紛失や貸し借りがあった場合に本人以外でも扉を開けられてしまいます。手のひら認証は本人の手そのもので照合するためこの問題を減らせますが、製品によって「皮下の静脈」を読み取るものと「手のひら表面」を読み取るものがあり、向く現場も確認すべき点も変わります。

本記事では、手のひら認証の仕組みと方式の違い、向く現場と顔認証・カードとの使い分け、導入前の確認事項を解説します。判断の軸は、顔認証が使いにくい現場か、読み取る特徴が求める安全水準に合うか、来訪者や例外のための代替手段を用意できるかの3点です。読み終えると、自社の入退室に手のひら認証を使うべきか、使うならどの構成にするかを判断できます。

手のひら認証の仕組みと入退室での役割

手のひら認証は、カードや鍵に代わって「本人であること」を確かめる入退室の手段です。まず、従来の運用に残る課題と、手のひら認証の基本的な仕組みを整理します。

カードや鍵の運用に残る課題

ICカードや鍵による入退室管理は、「カードを持っている人=本人」とみなす仕組みです。そのため、拾ったカードや借りたカードでも扉を開けられ、入退室履歴には本来の持ち主の名前が残ります。

発行・回収・再発行の手間も、管理者の負担になります。退職者のカードの回収漏れや、紛失時の無効化の遅れは、不正入室につながります。

手をかざして照合する仕組み

手のひら認証は、あらかじめ登録した手のひらの特徴と、端末にかざした手の特徴を照合して本人を確認する生体認証です。照合に使うのは身体そのものなので、カードのような紛失や貸し借りが起きません。

端末に触れずにかざすだけで認証できる製品もあり、利用者は何も持ち歩く必要がありません。照合に成功すると電気錠が解錠され、誰がいつ入退室したかが記録されます。

読み取る特徴による2大方式(静脈 vs 表面)

「手のひら認証」と呼ばれる製品でも、読み取る対象は同じではありません。個人情報保護法の施行令でも、手のひらの「皮下の静脈の形状」と「掌紋」は、別の身体的特徴として挙げられています。

【参考】法務省「日本法令外国語訳データベースシステム:個人情報の保護に関する法律施行令」

皮下静脈読み取り方式

静脈方式は、手のひらに近赤外光などを当て、皮膚の下を通る静脈の形状を読み取ります。静脈は体の内部にあるため外から見えにくく、指紋のように物の表面に残ることもありません。

【参考】e-Words「静脈認証(手のひら認証 / 指静脈認証)とは」

読み取るのは皮膚の内側なので、手荒れや表面の汚れの影響を受けにくいとされます。一方で、静脈を写すための専用センサーが必要です。

手のひら(掌紋)読み取り方式

表面方式は、カメラで手のひら表面のしわの模様(掌紋)や手の形を読み取ります。顔認証と同じように、撮影した画像から特徴を取り出して照合します。

皮膚の表面を見るため、手の汚れや傷、手荒れの状態によっては照合しにくくなることがあります。写真などによるなりすましへの対策(生体検知)があるかも、あわせて確認したい点です。

製品の方式を確認するポイント

どちらの方式かは、製品名だけでは判断できません。導入前に、次の点を製品資料や販売元に確認しましょう。

  • 読み取る対象は静脈か、掌紋や手の形か

  • 写真や模造品によるなりすましへの対策(生体検知)があるか

  • 手の汚れや手荒れ、寒い場所など、現場の条件で照合が安定するか(実機で試せるか)

サーバールームや研究開発エリアのように求める安全水準が高い区域ほど、方式となりすまし対策を重視して選びます。

手のひら認証が向く現場・注意が必要な現場

手のひら認証が適しているかを判断するうえで、現場で「顔」と「手」のどちらを露出できるかは重要な判断材料です。顔認証と比べながら、向く現場と注意が必要な現場を整理します。

顔が隠れる現場に向く理由

マスクやヘルメット、防塵服などで顔の大部分が覆われる現場では、顔認証の照合が難しくなる場合があります。手のひらを露出できる場合は、顔を覆う装備を着用した現場でも、手のひら認証を本人確認に利用できます。

顔の撮影に抵抗を感じる従業員や会員がいる施設でも、手のひら認証は選択肢になります。飛天ジャパンも、顔認証を控えたい場面では手のひら認証を使えると案内しています。

【参考】飛天ジャパン「AI顔認証モジュール」

手袋が前提の現場での注意点

一般的な手のひら認証端末では手袋を外して認証する必要があるため、作業用手袋や衛生手袋が必須の現場では着脱の手間が生じます。入室のたびに外して付け直す手間が大きい場合は、顔認証のほうが運用しやすくなります。

食品工場のように手袋の着脱に衛生ルールがある現場では、認証端末を手袋の着用前に通る場所(更衣室の手前など)に置けるかを先に検討しましょう。

顔認証との使い分け方

判断の起点は、現場で常に出しているのが顔か手かです。顔が隠れるなら手のひら、手袋が外せないなら顔、どちらも出せるなら利用者の受け入れやすさや設置場所で選びます。

エリアによって条件が違う施設では、1つの方式に統一する必要はありません。執務エリアは顔認証、作業エリアは手のひら認証のように、扉ごとに方式を変える構成も取れます。

カードやQRとの併用構成を決める

手のひら認証を導入しても、すべての人を手のひらだけで通すのは現実的ではありません。誰をどの手段で通すかを先に決めておくと、例外対応で運用が崩れるのを防げます。

来訪者や登録できない人への対応

来訪者や短期の作業者は、生体情報を登録してもらうより、QRコードやICカードで一時的に入室を許可するほうが手間がかかりません。けがや手の状態で照合しにくい従業員にも、代わりの手段を用意しておきます。

代替手段は「誰に、どの扉で、いつまで」使わせるかを決めて運用します。代替用のカードを誰でも使える状態にしておくと、カード運用の課題がそのまま残るためです。

電気錠や勤怠システムとの連携

認証端末は、扉の電気錠と連動して初めて入退室管理として機能します。既存の電気錠をそのまま使えるか、制御盤の交換が必要かは工事の範囲と期間に関わるため、早めに確認しましょう。

入退室の記録を勤怠管理に使う場合は、既存の勤怠システムと連携できるかも確認します。記録を手作業で転記する運用では、生体認証で正確に取った履歴を活かせません。

導入前に確認すべきポイント

方式と構成が決まったら、機器の仕様と生体データの扱いを確認します。生体データは個人情報にあたるため、機器選びと並行して社内ルールも整えておく必要があります。

機器仕様で確認する項目

機器を比較するときは、次の項目を同じ観点でそろえて確認します。

確認項目確認する内容
認証方式静脈か、掌紋や手の形か。なりすまし対策の有無
登録できる人数利用者数に対して、手のひらの登録上限に余裕があるか
設置環境屋内専用か、屋外にも置けるか。防塵・防水の性能
併用できる手段顔、QRコード、ICカードなどを同じ仕組みで使えるか
連携既存の電気錠、勤怠システム、入退室管理システムとつながるか
履歴の管理誰がいつ入退室したかを管理画面で確認・検索できるか

生体データの取り扱いルール

手のひらの静脈や掌紋を照合用に変換したデータは、個人情報保護法の「個人識別符号」にあたり、個人情報として扱われます。利用目的の通知・公表や、漏えいを防ぐ安全管理措置が必要です。

あわせて、登録時の説明と同意の取り方、退職時や契約終了時にデータを削除する手順も社内規程で決めておきましょう。

2026年7月に公布された改正個人情報保護法では、本人が気づかないうちに取得されやすい顔特徴データなどを対象に、新たな規律が設けられました。対象となる身体の特徴は今後の政令で定まるため、施行に向けて最新の情報を確認しましょう。

【参考】個人情報保護委員会事務局「個人情報保護法等の一部を改正する法律について」

まとめ

手のひら認証は、カードや鍵に頼らず、本人そのもので入退室を管理できる方式です。ただし、静脈を読むか表面を読むかで特性が異なり、手袋の現場では顔認証のほうが向くなど、現場の条件で向き不向きが分かれます。

導入を検討する際は、顔が隠れる現場かどうか、方式が求める安全水準に合うか、来訪者や例外への代替手段を用意できるかの3点で判断しましょう。そのうえで機器の仕様と生体データの取り扱いルールを確認すると、運用開始後の手戻りを防げます。

手のひら認証と静脈認証は同じですか?

手のひらの静脈を読み取る方式は手のひら認証の一種ですが、すべてが同じではありません。手のひら表面の掌紋や手の形を読み取る方式もあるため、製品ごとに読み取る対象を確認しましょう。

手袋をしたまま認証できますか?

一般的な手のひら認証端末では、認証時に手袋を外す必要があります。手袋が外せない現場では、顔認証との使い分けや、端末を手袋の着用前に通る場所に置く方法を検討しましょう。

手のひらの登録データは個人情報になりますか?

なります。手のひらの静脈や掌紋を照合用に変換したデータは「個人識別符号」にあたるため、利用目的の通知・公表や安全管理措置が必要です。

FaceTenで手のひら認証を導入する

飛天ジャパンの「FaceTen」は、顔認証と手のひら認証に対応した入退室管理ソリューションです。本人確認からドアの解錠、入退室履歴の管理までを一元化でき、顔認証端末、手のひら認証端末、QRコードやICカードによる認証を用途に応じて組み合わせられます。

手のひら認証端末「SpeedPalm-V5L」は屋内用で、公式仕様では手のひらを5,000件、ICカードを10,000件まで登録できます。屋外の出入口には屋外にも設置できる顔認証端末「G5」を使うなど扉ごとに方式を選べるため、本記事で整理した使い分けをそのまま構成に反映できます。

入退室履歴は管理画面で確認・検索でき、既存の勤怠管理システムや入退室管理システムとの連携にも対応しています。オフィス、会員制施設、マンション、工場・倉庫などで、カードや鍵の管理負担を減らしたい場合はFaceTenの製品ページをご覧ください。

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